NFBの功罪・・・位相変調(FM変調)


1.管球アンプの音はなぜ柔らかくなるのか、

従来型の真空管アンプを造って気が付くことは、オーバーオールのNFBを掛けずに電源をONにして基礎的な動作を確認しから、改めてNFBを掛けることを良くやることがあります。この時にNFBを繋いだ瞬間に音色が変わることを良く経験します。

その変わり方は人により感じ方は違うでしょうが、概して、音が柔らくなった、音が滑らかになり聴きやすくなったという経験をお持ちの方は多いと思います。

この現象は、従来型パワーアンプでオーバーオールNFBを掛けたアンプに表れる固有の症状です。

 

画像撮影:SDA広報

上のグラフはLux社OPT、OY15-5の周波数に対するリアクタンスXl, 及びXcをプロットしたものです。X軸は対数表示です。これで判ることはXl(青線)とXc(赤線)の交点が共振周波数を表しています。

共振周波数はOPTの課題のページで計算した周波数Fr.=180Hzと良く一致しています。そして、交点(共振周波数)より高域では容量性になり、位相は進みます。

NFBを掛けると、位相の進んだ出力信号が入力信号と合成されることになります。そこで起きることは位相変調がかかることです。位相変調は、すなわちFM変調が行われていることと同じです。

このFM変調が音が変わった、柔らかくなったと言われている症状です。そして、FM変調が掛かった信号が出力される音は、もはや、原音を再生するパワーアンプとは言えず人為的に音をいじったことになります。そして、パワーアンプとは呼ばずにFM変調器と呼ぶべきではないでしょう。


1.原音再生に必要なことは、共振周波数を高く!

従来のアンプから再生される音は位相変調(FM変調)が掛けられたおとを聴いていることになりますが、その遠因は飽くなき低音再生の追及に在ります。大きな一次インダクタンスを持ったOPTでなければ十分な低音は再生できません。

反面、位相差を起こさないようにするには小さなインダクタンスと小さな浮遊容量の巻き線にしたOPTが必要であるが、課題の解決はなかなか難しい。

この難問を解決する手段が、OPTの一次インダクタンスを複数の巻き線で造ることです。SDAでは、シングルアンプでは三本のコイルを巻き、プッシュプルアンプでは四本のコイルを巻き、大きなインダクタンスを得るためにコイル間に生成されるミューチュアル・インダクタンス(M)を活用します。Lの実態は小さく僅か0.25Hですが、三本のコイルでは第二階層を含めたMの総和は2の12乗で4096個になります。

さらに、四本のコイルでは生成されるMの総数は2の26乗で、非常に大きな数になります。

三本で巻いたOPTをシングルクロスシャント(SCS)Super-ULと呼び、四本で巻いたOPTをダブルクロスシャント(DCS)PPと呼んでいます。

低音再生にはミューチュアルインダクタンス(仮想インダクタンス)を利用し、高域の共振周波数は集中定数のLとCが関与して高い周波数で共振してくれます。 下のグラフから共振点が5KHz付近に在ることが読み取れます。更に、青色上向き矢印が複数ありますが、それらは仮想インダクタンスと浮遊容量の間で生成されると仮定している共振点です。共振点が複数個所あることで可聴周波数全域に亘り位相差が生じていないこと思われます。高い聴感を得るためにOPTの共振周波数をどこに設定するかが最も重要な技術と言えます。

下のデータのOPTはSDA-2010です。

画像撮影:SDA広報

さらに、コイル長が短いので線材の直流抵抗(Rdc)は従来型のRdc=180Ωに対してSDAのOPTはRdcが4.5Ωと小さい、故に、低い出力インピーダンスを得ることが出来いて、いDFを得ることが可能となります。